2016年5月15日日曜日

成田市で造園業3代目の吉岡賢人君(千葉大学園芸学部卒)をリーダーとする樹木医グループのボランティア15名が朝9時に甚兵衛の森に集まって、クロマツを守るための次の4つの調査・作業を実施しました。甚兵衛の森周辺の水田は、田植えがされて生き生きした景色でした。水の中をよく見ると、ミジンコ類やいろいろな生物が活動している筈です。
①樹冠部のおかしな様子(針葉のついていない枝があったり、ある高さから上部では当年枝がほとんど出ていない)から樹勢が低下しているかもしれないと思われる大木の根の調査、②私の依頼で、LCRメータと4極プローブを用いた生立木間のインピーダンスの測定、③前回も調査してクロカミキリ幼虫が寄生していることを確認した抜根NO.12の根を露出させて蛹になっているかどうかの確認、④抵抗性クロマツの若い木に浸透性殺線虫剤ネマバスターを土壌施用したにもかかわらず枯死進行中(近い将来確実に枯死すると思われる)の木の根からマツノザイセンチュウを検出するために材片の採取。

①のマツの大木の根元には途中から枯死した根がありますので、鋸で切断して丁寧に調べてみましたが、クロカミキリの幼虫は存在しませんでした。ただ、根を縦に割った内側は腐朽して黒くなっていましたので、一部シロアリが食害したのかもしれません。
②のマツ生立木間のインピーダンス測定は皆が手伝ってくれました。生立木の根をあまり露出させると木を衰弱させる可能性があるので慎重を要しますが、隣接した2本の間の表土を少しだけ剥いでみたら、一部の根は交差していました。インピーダンスは距離に関わりなく大体16~20kΩの範囲で一定でした。8.3m離れた1対だけは47kΩでしたが、同じく8.3m離れた別の1対は20kΩでした。これらの結果が何を意味するのか私には読み切れません。今日こういう調査をすることをメールで全員に知らせたら、前回参加して木の幹の中がどういう状態か電気的に測定するデモ試験をされた方からメールが届き、発電機によってはノイズが生じて妨害するので、正弦波インバーターが内蔵された発電機を使う必要があるとの助言をいただきました。今回吉岡賢人君が貸してくれた発電機はヤンマー製のYDG350VAというタイプですが、正弦波インバーターが内蔵されているかどうかは調べてみないとわかりません。いずれにしても、根系癒合の有無を電気的に判断するというアイデアは、大きな発電機を松林の中を持ち運ばなければならないことも含めて、そう簡単ではなさそうです。
③は、吉岡賢人君が前回採取したクロカミキリ幼虫を自宅でバイアルに水を1滴垂らしたティッシュペーパーと一緒に入れて飼育観察して、気温と地温も毎日記録して、蛹化、羽化するのを確認したうえで、現場の地面の下ではそろそろ蛹化が始まっている頃という予想をして実施しました。予想通り、近いうちに蛹化する老熟幼虫(表皮がミルキーになる)と蛹化して間もないまだ白色の蛹が見つかりました。これで、クロカミキリの成虫が羽化してくる時期をある程度予測できることがわかりました。
④については、「NPO松くい虫」代表で樹木医の阿部 豊氏が、枯死進行中の若い抵抗性マツの幹の地際からの材片採取と根の一部を採取しましたので、これからベールマン法による線虫の分離とDNA診断によるマツノザイセンチュウ検定が行われる筈です。

昼食のバーベキューを挟んで作業は夕方5時頃までかかりましたが、有意義で楽しい一日でした。こういう現場の泥臭い作業から学べる機会は貴重です。今回は千葉県森林研究所で長年松くい虫対策の研究実績のある福原一成氏(彼も千葉大学園芸学部環境緑地学科卒)も参加して、大変有用な情報を提供してくれました。

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