2016年5月19日木曜日

今日も昼休みに道場で空手の稽古を1時間しました。

ハウスに寄って、アメリカで入手した4種類の松くい虫抵抗性マツの発芽状態をチェックしてきました。一番早く発芽し始めた白ラベル(現段階では名前がわからないので播種したコンテナに貼ったラベルの色で識別)のマツは400種子中98本発芽していましたので、今日の段階での発芽率は約25%でした。緑ラベルのマツも少しずつ発芽し始めていて、400種子中17本でしたので発芽率は約4%でした。
興味深かったのは、発芽後の芽の形状が白ラベルは根元から分かれていたのに対して、緑ラベルは茎の上から分かれていて、マツの種類によって違いがあるということわかったことです。
残りの2種類はまだ全く発芽していませんが、どういう形状になるか楽しみです。
2年育てて野外に植えられるようになったら、抵抗性程度の検定や、抵抗性機構の解明や、日本の気候風土に適した種類の選抜などに使いたいと思っています。

甚兵衛の森での調査チームの主要メンバーの一人で、先日コゲラの写真を送ってくれた樹木医/造園業の石橋 亨氏からクロカミキリ対策に関する提案も送ってきましたので、以下のコメントを書いて返送しました。いわゆる林学や森林昆虫学の研究者が研究室内で得る研究成果に加えて、造園業に携わる樹木医の人たちが現場での調査から明らかにする実態解明は貴重だと思います。
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クロカミキリの調査方法や防除方法に関するご意見・ご提案もありがとうございました。私のコメントは以下の通りです。
1.クロカミキリがマツノザイセンチュウを根から侵入・感染させるかどうかの証明について
 培養しているマツノザイセンチュウを試験木の根に接種して侵入・発病を観察するのは、根からの侵入があり得るかどうかを確認する上でよい方法だと思います。ただ、それだけではクロカミキリ雌成虫が地面に潜って根に産卵する時に同じことが起こっているという証明にはならないと思います。やはり、体内にマツノザイセンチュウを保持しているクロカミキリ雌成虫を試験木に接種して侵入・感染が起こることを確認する試験(吉岡君が実施中)が必要ではないでしょうか。
2.クロカミキリとの共生と幼虫の防除について
 他生物との共生というのは私たち(人類)が目指すべき方向ですが、農業分野における有害生物との共生と同様に難しい問題があると思います。害虫も雑草も植物病原菌も人間が栽培する作物(食用植物)の高収量・高品質を確保するためには防除しなければなりませんが、かれらも自然生態系の一員ですから、地球上から絶滅させていいかどうかは難しいところです。農耕地そのものが自然を改変して作った人工的な食料生産工場ですから、私たちは少なくともその中では発生させないように努力しています。
クロカミキリの場合、生活史や生態にまだ不明のことが多々あるようですので判断し難いのですが、マツノザイセンチュウを含め、何らかの理由で衰弱したマツの根を選択して産卵し、幼虫が根を食害することで単に枯死を促進しているだけなのか、ある
いは、根に産卵する時にマツノザイセンチュウが侵入・感染して衰弱・枯死の主原因になっているのかが、まだはっきりしていないのではないでしょうか。
もし、松くい虫(マツの材線虫病)被害で枯死伐採されたマツの根株にクロカミキリ雌成虫が産卵して、そこで育った幼虫からマツノザイセンチュウを保持した成虫が羽化してさらに感染を拡大しているのでしたら、根株を放置しておくのは問題ですので、おっしゃる通り伐根を抜根除去することが必要ですね。
3.加害ステージの分類について
 加害ステージをレベル分けして考えるのは、ただ単に根に幼虫がいるというだけに比べて一歩進歩して科学的だと思います。ただ、現状では根を掘り起こさずに幼虫がどういうレベルかを推定する方法がありませんし、すでに経験しましたように、同じ時期に若齢幼虫と老熟幼虫が混在しているとすると、加害ステージのレベルによって防除対策を考えるというのは実際問題としては困難ではないでしょうか。
 
以上が私のコメントです。吉岡君をリーダーとした樹木医/造園業の方々が甚兵衛の森で熱心にいろいろな調査をされていることは、クロカミキリの生活史や生態の不明の点を現場から明らかにしていく上で大変貴重なことだと思っています。私にも参加(と言ってもほとんど見学だけですが)させていただいていることを感謝しています。