2016年6月28日火曜日

約束通り、日本時間の朝9:30 にシンガポールにあるCrop Life Asia(アジア農薬工業会)のDr. Vassant Patil から電話がありました。私がアセアン3ケ国(ベトナム、タイ、インドネシア)を再訪問して講演をするのは、8月7日(日)日本出発~13日(帰国)ということでアレンジすることになりました。訪問する国の順番と宿泊ホテルを向こうで決めて知らせてくれたら、航空券の手配は私がして、全ての経費と講演料はCrop Life Asia で支払ってくれる予定です。今回はそれぞれの国のジャーナリスト(メディア関係者)が主対象の企画で、農薬の果たしている役割などについてわかり易く(あまり技術的・専門的な言葉を使わずに)解説してほしいという依頼でした。
外国のジャーナリストに農薬について英語でわかり易く解説するというのは、私にとっては初めてのチャレンジですし、ついでにそれぞれの国の興味のあるところを見学できるのも大きな楽しみです。移動の時間もありますが、多分各国で半日~1日は自由時間があるのではと想像しています。

松戸市役所の河川清流課に寄って、千葉大学名誉教授と書かれた名刺を渡して、昨日実施された坂川沿いの樹木の病害虫防除の薬剤散布についていくつか訊きたいことがあると申し込みました。職員2名が対応してくれましたが、初めはどこで何が散布されたか把握しておられないようでした。私が現場に掲示してあった「薬剤散布のお知らせ」を写真にとってプリントして持っていきましたので、松戸市河川清流課が事業発注者だということが確認できたようでした。途中でもう1名会話に参加した職員が、何と千葉大学園芸学部で現職教授だった時に私の研究室で指導をした修士課程修了生のK君でした。市の職員は誰も散布に立ち会っていなかったようで、散布が昨日実際に行われたのか、何時に行われたのかも知りませんでした。しかし、坂川沿いに植栽されている河津サクラは市の所管なので、そのアメリカシロヒトリ防除が目的だったということは確認できました。私が、あのような環境でどのような散布機を使ったのか知りたいと言いましたら、施工業者が写真を付けて作業終了の報告書を提出にくるとのことでしたので、それが届いたら連絡をしてもらって見せてもらうことにしました。
施行業者はネットで調べたら、比較的近くにありましたので、本当に実在するかどうか念のため住所に行ってみましたら、高層マンションの1階部分に事務所がありました。しかし作業場や倉庫はありませんでしたので、農薬散布機等の機械はどこか別に保管場所があるようでした。たまたま私の研究室の卒業生が市役所の担当部署にいることがわかりましたので、施工業者が農薬散布の安全管理について基礎的知識を持っている「緑の安全管理士」 http://www.midori-kyokai.com/sikaku/ のような有資格者かどうかも確かめてもらおうと思っています。通行人がどんどん通る道に隣接した場所で、しかもそういう時間帯に散布をするのですから、念には念を入れて安全確保をすることが大切だと思います。

昨日見学した群馬県伊勢崎市の株式会社ザイエンス関東工場では、国産・輸入木材の防腐・防蟻処理をすることに加えて、木材保存剤の製造もしていました。その施設も見せてもらいましたが、製剤に使う殺菌剤・殺虫剤の原体も輸入品や国産品を使っていました。製剤の試作をする実験室レベル(小規模)の施設や、薬剤の分析をする化学実験室もありました。
製造された木材保存剤の出荷用ダンボール箱と4ℓ入り缶には、社団法人木材保存協会認定品という記載と認定番号の記載がありました。私たちがやっている木材保存剤等性能審査委員会というのは、この社団法人木材保存協会の委託を受けて申請品の性能と安全性の審査をして、それに基づいて認定が行われているのですから、慎重に審査しなければいけないなとあらためて自覚しました。
その他に木材腐朽菌の培養室と木材腐朽試験室、イエシロアリ飼育室と木材食害試験室などもあり、実に勉強になりました。
いつだったか松戸市内の近所で小児科クリニックを建てている時に、柱の下から1mぐらいは柿渋色のように着色していたので何だろうと思いましたが、今日の見学で建築基準法で土台から1mの柱の基礎の部分は防腐処理をすることが義務付けられているということを聞いて納得しました。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BB%BA%E7%AF%89%E5%9F%BA%E6%BA%96%E6%B3%95

最後に会議室でお礼を申し上げ、住宅を守るために必要な技術開発と防腐・防蟻処理木材の供給という重要な仕事をしている会社ですねと感想を述べたら、何年か前に埼玉県内のある県立工業高校の生徒たちが先生の付き添いで見学に来た時に、生徒の一人が最後の感想で「こういうところでだけは仕事をしたくない」と発言されて、がっくりきましたと言っていました。工業高校の生徒にとっては、電子工業なりIT産業なりに憧れていれば、生の木材を扱う第一次産業に近いようなこういう職場は理想と正反対だったのかもしれません。

一つだけ残念だったのは、国産木材が少なく輸入木材が圧倒的に多いことでした。日本の林業を振興するために国産材を住宅建設にもっと使ってほしいところですが、値段が高いことに加えて一定の品質のものを需要を満たすために大量にそろえるのが難しいとなれば、民間会社のビジネスとしてはそうせざるを得ないのでしょう。ただ、林業は木材の供給だけでなく、森林が炭酸ガスを吸収して酸素を供給したり、生物多様性を保全する場所を提供したり、緑の癒し効果や、水を貯めるダムのような国土保全の役割も果たしているのですから、国民全体で支援する必要があるのではないかと思うのですが・・。

7月の講演の配布資料の催促が届きましたので、明日と明後日が勝負です。