2016年7月8日金曜日

東京農業大学世田谷キャンパスの食と農の博物館セミナー室で、総合研究所研究会農薬部会(私が部会長)第102回セミナーが開催され、2題の講演がありました。久し振りに行きましたが、昔の大学本部と新しくできたアカデミアセンターの間にあるメタセコイアとケヤキの大木の林は、いい雰囲気でした。

いずれの講師もそれぞれの分野のトップの研究者ですから、素晴らしい内容でした。
東京農工大学大学院教授の有江 力先生は、植物病理学がご専門ですが、植物自体が持っている外敵に対する抵抗性を誘導することで病気に対抗する方法の基礎と実用化の現状についてわかり易く解説されました。
現在東海コープ事業連合商品検査センター顧問の斎藤 勲博士は、元々金沢大学薬学部のご出身ですが、長年愛知県衛生研究所食品薬品部に勤務された後で現職に就かれた分析化学がご専門で、食品残留農薬の管理・規制の実態と問題点について解説されました。

現在私たちが栽培しているトマトの原種は、サボテンが生えるような乾燥地に自生していたものから、人間の食物として適したように育種してきたことを示す写真は、私たちが普段当たり前のように思って忘れてしまっていることを思い出させてくれて貴重でした。プラントアクチベーター(抵抗性誘導剤)の長所だけでなく短所もきちんと指摘しながら、将来の発展の夢を感じさせてくれました。

食品残留農薬の問題は、食の安全を確保するための食品衛生法の硬直化した解釈のために消費者の誤解を招いて不安感を募らせ、食べても安全なものを廃棄せざるを得ないという無駄(世界の飢餓人口の存在を考えれば非道徳的行為)を生じていることをあらためて認識させられました。この無駄を止めるためには食品衛生法11条3項の改正が必要ですが、所管している厚労省の役人はメディアや消費者の反発が怖いので見て見ぬ振りをしているのに、誰が猫の首に鈴を付けに行くのかが問題です。ここはひとつ良識と根性のある政治家を見つけて、説得して動いてもらうしかないかもしれませんが、政治家も選挙で当選するためにはメディアや世論の動きに左右されるでしょうし・・。

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