2016年9月16日金曜日

東京農業大学総合研究所研究会には現在28の部会があります。http://nri.nodai.ac.jp/society/groups/
その中の1つ農薬部会は現在私が部会長の任にあります。http://nri.nodai.ac.jp/society/groups/17/
今日は第103回セミナー「新農薬の開発戦略」が開催され、次の2題の講演がありました。
1. 神経系作用化合物の作用機構に関する研究-殺虫剤抵抗性について
   日本曹達株式会社小田原研究所創薬解析研究部 
      先端研究グループ&分子設計グループ 平田晃一氏
2. ピラゾール環を母核とする新農薬の創製研究
   公益社団法人相模中央化学研究所所長 平井憲次博士

平田氏は新進気鋭の研究者で、神経系をターゲットとしている殺虫剤について、特にニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)とネオニコチノイドの関係を電気生理学的手法を用いて細胞レベルならびに遺伝子レベルで解析した研究について紹介しました。皆が興味を持っているヒトのような脊椎動物の神経と昆虫のような無脊椎動物の神経の間の選択性のメカニズムと、同じ昆虫種でも感受性系統と抵抗性系統の間の選択性のメカニズムを分子レベルで説明しました。

平井博士はベテランの研究者で、ピラゾール環骨格を持った多数の化合物を合成し、除草剤として実用化に成功した例と、殺菌剤として実用化に成功した例について紹介しました。ピラゾールカルボン酸エステルの製造技術の発明は、平成27年度全国発明賞を受賞し、常陸宮殿下、同妃殿下と共に受賞者全員の記念撮影の名誉に与(あずか)ったとのことでした。

セミナーの開催された「食と農の博物館」前には巨大な鶏像が立ってりますが、由来の説明版を見ると、昔タイがビルマに占領されていた時代に独立戦争に貢献した鶏にちなむとのことです。
博物館では常設展示の他に特別企画がありますが、今はピーター・メツェル&フェイス・ダリージオの「しあわせのものさし」と題した写真展示がありました。
http://www.menzelphoto.com/bio.php
http://photo.net/photographer-interviews/peter-menzel/
世界のいろいろな人たちの食生活に関する写真の中で、食用昆虫の写真と実物の標本展示もありました。日本人の多くはタガメやコオロギやダイコクコガネを食べることに抵抗があるでしょうが、終戦直後で食料難だった私の子供の頃は田んぼでイナゴ(バッタの一種)を採って炒って食べていましたし、今でも地方によってはハチの幼虫を食べるところもありますので、そんなに驚くべきことではないのかもしれません。

セミナー後は演者を囲んでの懇親会があり、さらにいつものように山本 出先生のご自宅で二次会もあり、楽しいひと時を過ごしました。