2016年9月9日金曜日

松枯れ防除実践講座2日目は、弘前公園(旧弘前城跡)で朝9時から始まりました。弘前公園は桜の名所として有名ですが、マツ(クロマツ、アカマツ、アイグロマツなど)も2千本ぐらいあるそうで、松くい虫被害が侵入していないので巨木があちこちに残っていました。弘前市公園緑地課の橋場真紀子氏と海老名雄次氏が現地案内をしてくれましたが、1658年に外西の郭の馬場前に並木松を植えたのが始まりで、「弘前藩庁日記」に1685年三の丸土塁上にマツを植えるように命じたと記載されているのが今でも残っているとのこと。特に樹高28.4mのアイグロマツは推定樹齢330年以上で、幹周685cmはアイグロマツでは日本一だそうです(2001年環境省全国巨樹・巨木フォローアップ調査)。
ここでは毎年マダラコール(フェロモン)トラップを設置(弘前公園10ケ所、大仏公園4ケ所)してマツノマダラカミキリの調査を実施し、2015年からは対象木1,678本に対して大径木から順に樹幹注入を開始し、6年間で対象木全てに注入予定とのことでした。

実習は公園管理事務所の中と外で行われ、中村克典博士の説明に続いて、樹脂漏出調査、DNA診断のための材片採取、樹幹注入、土壌灌注、伐倒木への生物農薬バイオリサマダラの施用や燻蒸剤の施用、などの実習が行われました。5班に分かれて、順に実習サイトを移動しましたが、ちょっと人数が多過ぎて全員が体験するには難しい面がありました。
受講生の大半は県や市の緑地・林業関係者と民間の造園関係業者などでしたが、松くい虫被害を抑えている全国唯一の県(北海道を除いて)ということもあって、松くい虫には負けないぞという参加者の熱意が感じられた2日間の講座でした。

私はせっかく田中一二三さんとお会いできましたので、今夜一杯どうですかというお誘いに乗って、もう一泊宿泊することにして田中さんの宿泊しているホテル内の居酒屋で閉店の夜11時近くまで楽しい時間を過ごしました。田中さんが九州大学造林学講座の先生方と共著でまとめた論文の別刷りをいただきました。
田中一二三・保坂武宣・玉泉幸一郎(2015)根系癒合を経由したマツ材線虫病への感染と被害拡大への影響評価. 樹木医学研究第19巻2号, 100-101
田中さんは千葉大学園芸学部別科の出身で、私より10年先輩だという気安さから、海外でも引用できるように今までの調査研究の結果をきちんと原著論文の形で公表して下さいとお願いしました。それと、田中さんはマツノザイセンチュウを通常行われているように地上部に接種した場合と地下部の根系に接種した場合では、根系接種の発病速度が遅いということから、寒冷地でよく問題になるいわゆる「年越し枯れ」現象は実は根系癒合による感染発病ではないかという仮説を持っておられるので、是非それを実証する研究をして下さいとお願いしました。
意気投合して大いに盛り上がりましたが、84才の田中さんがまだまだ探究心旺盛で頑張っているのに、74才の私が年寄ぶってはいられないなと励まされたひと時でした。