2016年9月19日月曜日

千葉県成田市甚兵衛の森の樹齢約300年のマツの巨木を松くい虫被害から守るために、殺虫剤の予防散布と殺線虫剤の樹幹注入が行われていますが、今年は予防散布は6月10日、21日、30日の3回実施されました。
スミパイン乳剤(有効成分フェニトロチオン80%)の167倍希釈液をクレーン車の先端に固定したノズルを使って散布しましたが、樹高20m以上ありそうな高木の樹冠部に対する地上からの散布ですので、ノズルの下で操作をしている散布作業者と近くで作業を監視している作業監視者へのばく露が気になります。

そこで作業発注者と受注者の了解を得た上で、散布作業者はヘルメットを被って防護メガネ、防護マスク、手袋を着用して通常通りの散布作業をしましたが、ヘルメットの横の顔の位置に直径7cmのろ紙と腰に下げた小型ポンプと接続したSep-Pak PS-Air Plus カートリッジを装着してもらって、推定経皮ばく露量と推定吸入ばく露量を調査しました。外部委託した分析結果が届きましたので、調査結果を報告書の形でまとめる作業を始めました。
作業者のフェニトロチオン経皮ばく露量は629~813ng/cm2、作業監視者のフェニトロチオン経皮ばく露量は5ng/cm2でした。作業者のフェニトロチオン吸入ばく露量は0.3~4.1μg/m3、作業監視者のフェニトロチオン吸入ばく露量はN.D.(定量限界未満)でした。
吸入ばく露量は、環境省が設定した生活環境のフェニトロチオンの気中濃度の評価値10μg/m3以下でしたので問題はないと思われます。経皮ばく露量は実験動物に連続的に経皮投与して得られた無毒性量に安全係数を掛けて算出したヒトに対する推定無毒性量1,760ng/cm2の半分程度でしたので、職業として頻繁に散布作業をする場合は防護具の着用が必須と思われます。
報告書ができたら、作業発注者と受注者の両方に提出して、注意を喚起しようと思っています。