2016年10月22日土曜日

東京大学農学部で日本衛生動物学会東日本大会がありましたので、私も一応会員になっていますので(大昔、殺虫剤抵抗性の機構について特別講演をしたことがあります)、午前中の一般講演の部(9:30~11:35)に参加しました。この学会に顔を出すのは久し振りでしたが、会員になっている私の千葉大学時代の研究室の卒業生等が私の姿を見つけてすぐ挨拶に来てくれました。

この学会は病気を媒介する蚊やマダニやネズミ等の小動物に関する研究が主対象です。「横浜市街のドブネズミに見いだされた広東住血(かんとんじゅうけつ)線虫」では、横浜市内の簡易宿泊施設で飲食店も多い地区でネズミ調査を行い、ドブネズミについて広東住血線虫の検査(DNA診断)も実施した結果について報告していました。
広東住血線虫症 http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/384-kanton-intro.html は、失明や脳炎の原因になることが知られています。講演での写真では、路上に放置されている生ごみの集積場が多々ありましたので、ドブネズミの発生源になることは理解できますが、この線虫の中間宿主のナメクジやカタツムリの主な発生源はどこかということが気になりました。
日本ではナメクジやカタツムリを食べる習慣はないと思っていましたが、質疑応答の中で、演者がネットで調べると「ナメクジを生で飲み込むと喘息に効く」というような情報がまことしやかに載っていると話していましたので、驚きました。

新聞や雑誌やテレビのいわゆる健康食品の宣伝を見ると果たしてどれだけ科学的な根拠があるのか疑問ですが、松くい虫防除の薬剤散布は周辺住民に健康被害があるとして中止に追い込む反対活動をしている反農薬活動団体が、農薬の代わりに木酢液の使用を提案しているという情報に接することが時々あります。農薬は化学合成薬品だから危険だが、木酢液は天然物だから安全と思い込んでしまっているのでしょうが、全く呆れてものが言えない非科学的な思い込み(宗教)です。こういう人たちの活動によって結果として何十年もかけて育成してきた貴重な松林が枯死してボロボロになっているのですから、単に科学的な無知を笑い過ごすだけでなく、こういう人たちのやっていることは国民の利益を損なう犯罪行為だということを本人たちも社会も認識してほしいものです。

研究室の高齢者対象の同窓会「名月を愛でる会」は、地下鉄三越前の近くで1時から3時まであり、加齢とともに体調のすぐれない人も増えてきて参加人数は段々少なくなってきましたが、先輩・後輩と楽しいひと時を過ごしました。
日本衛生動物学会東日本大会のプログラムでは特別講演は16:10~17:40となっていましたので、まだ間に合うと思って地下鉄を乗り継いでもう一度東京大学の会場に戻ったら、ギリギリ糸川健太郎博士の講演に間に合いました。糸川君は神戸大学を卒業後、大学院を千葉大学の私の研究室に来た卒業生ですが、ゲノム編集技術の最近の発展について概説し、殺虫剤抵抗性の蚊の解毒酵素シトクロムP450の遺伝子にその技術を応用して、当該酵素による殺虫剤の解毒が抵抗性の主要因であることを証明した研究について紹介しました。
卒業生の活躍を見るのは嬉しい限りですが、まだ国立感染症研究所のAMEDリサーチレジデンス(いわゆるポストドクに相当)という不安定なポジションですので、いずれはどこかで安定して研究に従事できるポジションに就けることを期待しています。

東京大学構内では高所作業車を使って大きなイチョウの木の銀杏(ぎんなん)を落とす作業をやっていました。一人は高所の作業箱の中でしたが、もう一人は高所の枝に足をかけて作業をしていましたので、落ちて怪我をしないかちょっと心配になりました。大量の銀杏はごみとして捨てるのか、商品として売るのか、自分たちで食べるのか・・。