2017年1月13日金曜日

来週の土曜(21日)の名古屋大学での講演では、松くい虫防除の失敗の一例として千葉県の九十九里浜蓮沼海浜公園における砂防林消滅についても紹介する予定ですので、現在の姿の確認と写真撮影のために車を運転して現地に行ってきました。
2007年までは日本の白砂青松100選にも選ばれた55Kmにも及んだ見事な砂防林は、ヘリコプターによる薬剤散布が当時の堂本暁子(あきこ)千葉県知事(2期:2001~2009年)の間違った政治的判断で中止に追い込まれた2008年以降松くい虫被害で数年で見るも無残な姿になって消滅しました。マツがなくなった荒れ地の中に立っている北部林業事務所が設置した看板が空々しく見えました。

展望塔の近くは子供の遊び場になっていて、何本か残っているマツは全部殺線虫剤の樹幹注入剤施工済票がホッチキス留めしてありました。ヘリコプターによる薬剤散布を止めても、何年か間隔で高額の経費をかけて樹幹注入したマツだけは生き残ったようです。
ソテツ(蘇鉄)も植栽されていて、先日松戸の江戸川近くの農家の庭で見たのと同じように真っ赤な実がなっていました。
砂浜には枯死したマツが骸骨のように立っていて、ベトナム戦争時に米軍の枯葉剤で消滅したジャングルのような寒々とした印象を与えました。

防潮堤の裏側には、マツ林を再生するために竹垣で囲んだ苗が植樹されていました。房総半島南端の平砂浦では、マツが50%で残りは潮害に強い3種類の広葉樹(トベラ、マサキ、グミ)が植栽されていましたが、ここでは各区画に7列×7行=49本の中で、マツは37~51%で、残りはトベラとマサキが約半々で、グミはありませんでした。
防潮堤の上にはマツが植栽されている部分がありましたが、枯死進行中やすでに枯死した苗も見られました。
千葉県では、第二次世界大戦終了後何十年という長い年月と莫大な税金をかけて育成・保全してきた県民の貴重な財産が松くい虫防除の失敗によって水泡に帰したにもかかわらず、誰もそれを検証せず、反省もせず、責任もとっていないのですから、全く無責任体質で情けない話です。一番情けないことは、県庁のキャリア組の担当部署や現場の北部林業事務所・南部林業事務所や森林研究所の中に知事の間違った政策をいさめて止める人が誰もいなかったということでしょう。後悔先に立たずです。

植樹区画の樹種ごとの生存苗数を観察したり、写真を撮ったりしている時に、上空を頻繁(2~3分間隔)に飛行機が飛んでいることに気がつきました。気をつけて見上げてみたら、全部太平洋側から飛んできて、成田の方角に飛んでいきましたので、この辺りがちょうど成田空港に着陸する飛行機の進入路になっているのかもしれません。

     (写真はクリックすると拡大できます)