2017年2月11日土曜日

昨日の東京農大における生物的防除部会の講演会の演題2の和田哲夫氏の講演は、実は非常に面白い内容を含んでいました。
IOBC(International Organization for Buiological and Integrated Control:国際生物および総合防除機構)のような生物的防除の普及・促進を主目的にした団体数は1990年代初期にはほんの僅かだったのが、2000年時点でかなり増えて会員数でみると米国で30社程度、日本とEUが10社程度になり、現在はさらに増えて世界のトップクラスの農薬企業が加わり、日本でもアリスタ社、出光社、SDSバイオテック社、協友アグリ社、信越化学社、住友化学社、セントラルガラス社、その他20を超す関係団体や個人が会員になっているという事実から、関心の高さと期待の大きさを示しました。

それにもかかわらず、現実としては生物農薬(Biopesticides)の市場(売上額)は非常に小さく不振だという実態を認め、その理由として、農家が生物農薬よりも化学農薬を選択するということと、害虫大発生の時はどうしても防除効果がマイルドな生物農薬ではなく、防除効果がシャープで即効的でもある化学農薬に頼らざるを得ない・・、というようなことを挙げました。また、生物農薬をもっと普及させるには、防除暦に生物農薬を載せるなどして行政的に圧力をかけて強制(Compulsary)することが必要と指摘しました。
農家は必ずしも生物農薬を環境や自然に優しいから使うのではなく、コナジラミ類やアザミウマ類のような難防除害虫や抵抗性害虫に対して有効だから使うのであって、例えばMovento(有効成分スピロテトラマト) https://www.crop.bayer.com.au/find-crop-solutions/by-product/insecticides/movento-240-sc-insecticide のようなこれら吸汁性の害虫に有効な殺虫剤が登場して農薬登録されると、生物農薬を止めて化学農薬に戻ってしまうという指摘もしました。
生物的防除を推進する活動をしている演者がこのような実態を正直に述べたことは、良心的であり素晴らしいと思いました。

和田氏の講演は、生物農薬(天敵)の農薬登録を要求しているのは日本だけであり、登録に必要な試験データについても言及し、例えば天敵を1作物1害虫に対して登録するには圃場や施設での3年間で8例の効果実証試験データが要求され、通常そのような試験を実施するには1試験当たり25~30万円の試験費用がかかるので、約250万円のコストがかかることも生物農薬の普及を抑制している因子であることを指摘しました。
しかし、大量増殖された生物農薬は国産であれ輸入であれ、生態系に対して悪影響がないことを確認する必要がありますので、和田氏自身は生物農薬に農薬登録を要求することに対してどういう考えかという私の質問に対して、農薬登録は必要であり、それによって農家に供給される生物農薬の質が確保されている(輸入された天敵のパッケージにはラベル通りの天敵個体数が入っていなかった事例があることに言及して)という回答でした。

今日は建国記念日で祭日でしたので、江戸川を東京湾に向かって左岸の堤防を4時間ウォーキング/ジョギングしてきました。園芸学部構内の故志賀孝治教授記念梅園に寄ってみましたら、かなり開花が進んでいました。
市川市の国府台付近の河川敷では、ラジコン飛行機を飛ばしている人たちがいて、ドローン(マルチコプター)のような小型の飛行体を草むらに設置した輪の中をくぐらせていました。江戸川に人がついていない釣竿が何本も並んでいましたので、よく見たら変な仕掛けがしてありました。仕掛けには番号がふってあってアンテナみたいなものが立っていましたので、魚がかかったら信号を発信する装置かなと想像しました。もしそうだとすると、本人はどこか近くで寝転んでいても何本もの釣竿を使えることになります。ハイテクフィッシングでしょうか・・。
帰りは矢切の斜面林と江戸川堤防の間の農耕地の中を流れている坂川に沿って帰ってきましたが、橋の下にはホームレスの人が居住する場所にしていました。河川を管理している行政との駆け引きがあるらしく、橋によっては橋の下を工事用の鉄板で囲ってホームレスの人が使えないようにしてありました。
畑の端にワタ(綿)が植えてあり、白いワタの実がなっていました。まさかワタを収穫するために植えてあるわけではないでしょうから、アオイ科の花を楽しむために植えたのでしょう。