2017年2月19日日曜日

昨日の松園会における前JA全農代表専務理事加藤一郎氏の講演「農村地域の活性化に向けての考察-商系、系統の時代は終わった」は、本当に素晴らしい内容でした。
日本農業の現状として示した統計はショッキングでした。
(1)販売農家163万戸のうち、専業農家は45万戸(28%)で兼業農家は118万戸(72%)
(2)専業農家のうち65才未満の男子世帯員(生産年齢人口)のいる農家は18万戸
(3)2011年個別経営の農業所得は120万円、農外所得160万円、年金所得180万円
(4)稲作農家(水田1~2ha経営規模)の時給は328円で最低賃金を下回る
(5)農家一戸当たりの農地面積は日本約2ha、米国約198ha(104倍)、豪州3,024ha(1591倍)
(6)日本の新規就農者は60才以上が5割
こういう実態を述べて、棚田等山間地の農業を産業としての農業と言えるのか、と指摘しました。

結局加藤氏の主張は、「産業としての農業と社会・地域政策としての農業を区別すること」という提案だったと思います。「モノは輸入できても、景観・環境は輸入できない」ことから明らかなように、農業(特に水田)のもつ多面的機能(農業工学研究所の試算では約37兆円で、農業総生産額の4.6倍に達するということから、単に規模拡大とか生産性の向上で農業の国際競争力を高めるという政策だけでは問題解決にはならず、社会的共通資本としての農業をどう支えるかということがポイントであるという指摘だったと思います。

今日は水元公園の水辺のいきもの館(旧東京都水産試験場)で、東京都東部公園緑地事務所主催の「水元公園の自然を考えるワークショップ第3回」が10:00-12:00にありましたので、私もウォーキングを兼ねて朝9時に自宅を出て、園芸学部構内を通って、江戸川の葛飾大橋を渡って水元公園Bブロックに行きました。
園芸学部研究圃場の故志賀孝治教授記念梅園の梅の花はほぼ満開でした。JR常磐線の陸橋からは富士山が見えるスポットがありますが、今日は晴天だったせいか雪で真っ白な富士山がくっきりと見えました。葛飾大橋の上からも東京スカイツリーと富士山の両方が見えました。午前中に富士山がこれだけくっきり見えるのは1年に何回かしかないと思います。

ワークショップは参加者定員20名となっていましたが、主催者側とその関係者として東京都から2名、葛飾区役所から2名、有限会社プラネット・コンサルティングネットワーク http://edogawanavi.jp/shop/502507/ から2名(その中の1名は昔私の講義を受講したことのある千葉大学園芸学部環境緑地学科の古い卒業生でした)、サービスセンター(水元公園の整備・管理をしている民間組織?) http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/access041.html から2名で、一般参加者は私以外は水元公園で長年自然保護活動のボランティアをしている人たちが5~10名でした。
水元公園を所管している東京都が、水元公園生物多様性保全管理計画を策定するために、有限会社プラネット・コンサルティングネットワークに調査と計画を委託したらしく、同社の担当者が配布された資料に基づいて広大な水元公園(96万3千m2)の場所・エリアごとに目標とする環境(植生)と整備・管理方針と実施担当者の案について詳細に説明しました。質疑応答時間に、ボランティアグループからいくつか厳しい問題点の指摘や提案がされました。今年度(平成28年度)に計画を策定し、来年度(平成29年度)に実施設計をし、整備工事は再来年度(平成30年度)から実施されるという予定のようです。

難しいのは、生物多様性をどうとらえるかで、外来種はできるだけ排除して在来種を保全あるいは再生させるにしても、水元公園に昔から存在した特有の生物種の再生を図るのか、日本の他の地域から導入された在来種も含めるのかの問題があります。また、人の手で管理して特定の生態系を維持するのか、放置して自然の遷移をよしとするのかや、市民や子供の利用をどう図るのかなど問題があります。ボランティアグループから、今日の自分たちの意見がどう反映されるのか、5月に予定されている実施設計の前にもう一度フィードバックしてほしいという要望が出されました。

帰りに江戸川の河川敷で先日誰かがヨシやオギを刈って束ねていた場所に寄ってみました。川の中に設置して遡上してくる魚の隠れ場所か産卵場所を作るのかという私の想像はどうも間違っていたようで、岸辺に設置してありましたので魚釣りをする人が風よけの壁代わりに使うもののように見えました。