2017年7月14日金曜日

「楽しく、正しく農薬を知ろう!農薬どさんこ塾 2017」 と銘打った農薬シンポジウムは旭川市民文化会館の小ホール(定員318席)で実施されました。敷地内には円形の池やカラマツ等が設置・植栽されていて、洒落た施設でした。今回は2つの高校の4クラス(1年生~3年生)が授業の一環としてチャーターしたバスで引率の教諭と一緒に到着して参加しましたので、会場はほぼ満席になって業界関係者は最後尾で立席になってしまいました。
午前11時から主催者と出演者の進行打ち合わせをしました。総合司会は、有限会社ボイスオブサッポロの代表取締役/アナウンサーの橋本登代子氏、パネルディスカッションのコーディネーターは一般社団法人北海道植物防疫協会会長の中尾弘志氏が務め、パネリストには私の他に生産者代表として有限会社助安(すけやす)農場代表取締役の助安誠二氏、流通代表として株式会社大金の代表取締役の金田道従氏、消費者代表として生活協同組合コープさっぽろ組合員活動委員会旭川地区委員長の川辺ひろみ氏が参加しました。
橋本登代子氏と中尾弘志とは、以前札幌で農薬シンポジウムが開催された時にも一緒でしたので、顏なじみでした。
私の基調講演の後15分間の休憩を挟んでパネルディスカッションがありましたが、各パネリストの自己紹介と農薬についての見解を述べた後、あらかじめ参加申し込みの時に寄せられていた質問事項に答えるような形で進行しました。
金田氏は、有機農業に関する話題で、有機JASの認証を受けてアズキ(小豆)の栽培を試みたが、雑草に覆われて断念した経験を紹介しました。コーディネーターの中尾氏は、元々北海道の農業試験場に長年勤務した経験から、アズキは初期生長が遅いので早く生長する雑草に負けてしまうとコメントしていました。

消費者が農薬について抱いている不安・疑問・質問は、どこの地域で農薬シンポジウムを開催しても大体共通しているようで、旭川の場合は次のような質問が寄せられていました。
1. よく「日本は単位面積当たりの農薬使用量が世界一」と言われるが、何故か。
2. ミツバチ保護のためにネオニコチノイド系農薬を禁止したがミツバチの減少が止まらないという記事を目にしたことがあるが、ネオニコチノイド系農薬と有機リン系農薬の人体への影響はどうなのか。
3. 家の周りは水田や畑が多い環境だが、散布された農薬が家の中にも飛んで入ってきているのか。
4. 農薬はどれくらい洗えばいいのか、水洗いで除去できるものなのか。
5. (食品)残留農薬は身体に影響があるのか。
6. 農薬の土への残留期間と影響は。
7. 市場に出ている野菜は農薬の検査をクリアしたものだけか。
8. 外国産の野菜の農薬使用が心配だ。
9. アレルギーと農薬の関連性が知りたい。

ほとんどの質問については私の基調講演の中でカバーされていましたが、特に1.の質問については会場から同じ質問が出ましたので、少し丁寧に回答しました。①単位面積(ha)当たりの年間農薬使用量(有効成分kg)は、中国>韓国>日本の順で日本は第3位、②病害虫・雑草の発生は国によって、また路地栽培か施設栽培かによっても異なるので、一概に単位面積当たりの使用量で比較して多い・少ないというのは適切でない、③日本のように施設栽培の割合が高くて同じ圃場で周年栽培をする場合は農薬の散布回数も多くなる、④国によって病害虫の発生し易い作物と発生し難い作物の栽培面積の割合が異なるので、単位面積当たりの一概の比較での判断は適切ではない、⑤作物別の農薬使用量について見ると、日本の使用量が他の国より多い場合と少ない場合がある、⑥虫食いや病斑のない高品質の作物を求める日本人の国民性もあって、生産者はそれを満たすために農薬散布をせざるを得ない、⑥いずれにしても、厚生労働省の発表(2006年度)の残留農薬検査結果では、検査数3,455,719件に対して農薬検出率は0.28%で、99.72%からは検出もされていないので、残留農薬の安全性の問題はない。⑦何らかの残留農薬が検出された場合でも、基準値をオーバーしていたのは0.012%に過ぎず、しかも基準値自体が十分な安全性を見込んで厳しく設定されているので、それを短期間食べても健康影響はないに等しい。









シンポジウム終了後、宿泊ホテルにチェックインし、懇親会に出かける6時まで時間がありましたので、ホテル周辺を一人で少し散歩してみました。旭川は昔内地からの屯田兵が入植して開拓し、ロシアに対する守りとして第7師団が設置されていた名残で、基地に通じる道路は師団道路と呼ばれていたのが、戦後平和通りと改称され、現在は買い物通りと呼ばれているとのことでした。実際に行ってみると歩行者天国のような通りになっていましたが、車社会になってしまったせいか、それ程ビジネスとして活気が溢れているようには見えませんでした。そこと交差する7条緑道という道路には両側にハルニレの木が植栽されていて、至る所にブロンズ像が設置されていて、まるで芸術通りのようでした。
6時にホテルに迎えに来たタクシーで懇親会場の居酒屋「志ば田」に向かいました。