2017年9月24日日曜日

私は8月28日に群馬県の伊香保カントリークラブで開催された東京農大グリーン研究会/東京農大総合研究所研究会芝草部会共催の夏期研究会で松くい虫問題について講演をしましたが、東武緑地(株)の社員が参加していたらしく、後日同社のコース管理部の担当者から富士ゴルフコースの松枯れ問題について詳しい資料を添付したメールが届きました。当該ゴルフ場ではマツは年に数本枯れてはいるが松くい虫は検出されていないので、防除を続ける必要があるかどうか私の意見を訊きたいという内容でした。

【富士ゴルフコースの概況と現在の松くい虫防除概況】
■ゴルフ場の概況
・住所 山梨県南都留郡山中湖村山中262-1
・標高 1038m~1090m
・コース面積 約30万㎡
・松の本数  約1130本  アカマツ主体 H=15m  樹齢90年超 
■防除作業(年3回実施)
・6月下旬・・・全面薬剤散布(マツグリーンをスパウター、及び手散布により散布)
・8月上旬 ・・・6月下旬散布と同じ
・1月下旬・・・全エリアを4区画に分け、毎年エリアを移動しつつそのうち主要な約130本のみ薬剤(メガトップ:規定量)を樹幹注入している。
⇒全区域の740本の樹幹注入は実施できていない。
⇒メガトップの薬効が5年であるが4年周期で同じマツに樹幹注入を実施している。 
■被害状況
なし(年に数本枯死した樹木について検体を出しているが松くい虫による被害は見受けられていない)
 
同ゴルフコースは標高1,038m~1,090mに位置するとのことですので、田畑勝洋博士に松くい虫の生息・分布可能範囲は何で決まるのか問い合わせましたら、MB指数が22以上、マツノマダラカミキリ」の有効積算温量が700日度以上とのことでした。そのことをお伝えしましたら、早速MB指数を近くの気象庁山中測候所(7.8km離れていて、標高は63m低い)の気温データを使って計算したところ18.3になって22を超えていないが、有効積算温量は7月28日以降は700日度を超えるとのことでした。従って、ぎりぎり松くい虫が発生できるかできないかの境界ぐらいかなと推察できます。
上記資料の最後の、「年に数本枯死した樹木について検体を出しているが松くい虫による被害は見受けられていない」というのは、具体的にどうやっているのかという私からの追加質問に対して、業者が枝先を採取してマツノザイセンチュウ陽性かどうかDNA診断をやってもらっているとの回答でした。
マツノザイセンチュウの感染・枯死木の樹体内分布と密度には大きな振れがありますので、通常私たちは枝の他に、幹、幹の基部、株元を少し掘って露出させた根の部位から材片を採取して、ベールマン法で線虫分離とDNA診断をすることにしています。
枯死木を伐倒した時に枝先(当年枝・1年枝)の樹皮の後食(こうしょく)痕があるかどうかと、幹や枝の樹皮下にマツノマダラカミキリの幼虫が存在することを示すフラス(虫糞+木屑)と幼虫の穿入孔があるかどうかを丁寧に観察することも重要です。
コース管理部の担当者に、場合によっては次回に枯死木を伐倒する時に私たちが現地に出向いてこれらの観察と複数部位からの材片採取とDNA診断をしてもよいと提案しましたが、返信はありませんので、多分その必要はない(自分たちでできる)という判断になったのではと解釈しています。
これらの情報がない段階では、防除を中止してもよいかどうかの判断はできませんが、春に被害木が目立つということからは、寒冷地に多い年越し枯れの可能性が想像されます。
 



 
江戸川堤防に出かけ、坂道トレーニング3往復を含めて1時間20分ウォーキング/ジョギングしてきました。
園芸学部の旧正門に下りる道にはまたスズメバチの死体が2頭分ありました。昨日は白い色の花が咲いていた酔芙蓉は、今日はピンク色の花に変わっていました。
園芸学部の研究圃場のキンモクセイもいい香りのする黄色い花を咲かせていました。この木は私が現職の時に、多分今から30年ぐらい前だったと思いますが植えた木です。
落葉を見ると、それぞれ役目(光合成)を果たして世代交代したなと思って、ご苦労さんという気になります。これからは微生物その他によって分解されて土の成分の一部になって、また植物の根から吸収される栄養分となるのでしょう。