「天然活性物質の構造改訂と機能解析を目的とした合成研究」
石神 健(東京農業大学生命科学部部分子生命化学科教授)
「新たな農薬管理行政の動向と方向性」
山本廣基((独)大学入試センター理事長)
石神先生は東京大学の農芸化学科の出身で、合成が専門で、2017年に東京大学農学部准教授から東京農業大学教授として着任された方です。今まで取り組んでこられた研究について、難しい合成の話を細かい話は省いて大きな流れと成功した合成化合物によってどういう成果が得られたか、得られる可能性があるかについて紹介しました。学生時代は昆虫フェロモンの合成に関わった経験から、植物が害虫に加害された時に放出するmethyl jasmonate やmethyl salicinate が警報フェロモンのような役割を果たして、それらを受容した他個体の防御物質を支配している遺伝子の発現を促進することを示したスライドは、わかり易く興味深いものでした。先生は趣味として自転車レースに出場することを挙げられ、レースに出た時の写真も紹介しました。
山本先生は元々農薬の環境化学分野の研究者で古くからの知人ですが、島根大学教授・学長を経て、現在の独立行政法人大学入試センター理事長をしていますが、私の後任として農水省の農業資材審議会農薬分科会長の任にあります。農薬管理行政の最近の動きとして、7月13日の農業資材審議会で示された登録農薬の再評価の課題や農薬取締法改正の課題や作物のグループ化の課題などについて一つ一つ詳しく紹介しました。再評価はコストの問題や時間の問題などが予想されます。一応2021年度からは15年間隔で再評価をするという方針だそうですが、再評価の対象にする農薬の優先順位をどう決めるかの考え方を示しました。すでに各農薬メーカーは8月中に資料を提出済とのことです。ミツバチの問題についても、単なる有害性(毒性)だけでなく、成虫以外への影響や暴露も考慮したリスク評価を行っていくという方針を紹介しました。
セミナー後は食と農の博物館1階のレストランで講師を囲んでの交流会があり、その後さらに山本 出先生のご自宅で二次会がありました。
(スライドはクリックすると拡大できます)
東京農業大学の横には第一高等学校・中学校がありますが、その並びに駐輪場とサークル活動の部室があったところに小学校の建設工事が行われていました。
大学構内には大銀杏(いちょう)があり、その周りには銀杏(ぎんなん)がたくさん落ちていました。
食と農の博物館では鶏について特別企画の展示がしてありましたので、セミナーの始まる前に観てきましたが、鶏の原種と世界の鶏の剥製(はくせい)標本が展示されていて、こんなに変異があるのかと驚きました。日本の鶏は同博物館の2階に常設展示されていますが、オナガドリやチャボなど珍しい鶏の剥製標本があります。さすが東京農業大学らしい、素晴らしい企画だと思いました。