一昨日視察に行った館山市の芝生育成圃場の近くのどんどん川には、地元のNPO法人「安房の海を守り育む会」
http://www.city.tateyama.chiba.jp/anzen/page000681.html
の人たちがEM菌(有用微生物群)の培養液と団子を投入して水質浄化活動をしているようです。
海に流入する川を浄化することで昔のきれいな海を取り戻すという目的は崇高で、共感できますので、EM菌の水質浄化効果についてネットで検索してみたら、片瀬久美子博士のwarbler's diary というサイトに、「EMによる水質改善効果徹底検証」というテーマでシリーズで書かれた以下の3つの記事が見つかりました。
(1)http://warbler.hatenablog.com/entry/2016/05/04/175520
(2)http://warbler.hatenablog.com/entry/2016/05/04/211415
(3)http://warbler.hatenablog.com/entry/2016/05/05/001901
これを見ると、よくもまあこれだけ丁寧にデータを収集して調査をしたなと感心しますが、pH、BOD、COD、全窒素、全リン、臭気、大腸菌群数で比較すると、EM菌には主張・宣伝されているような川や池の水質浄化効果は認められないという結論に達しています。特に上記(2)の記事では、神田川水系ではEM菌投入を始めた2005年以降は他の調査地点と同様に大腸菌群数が増えているという指摘をしています。
サイエンスライターと自称している片瀬久美子博士とはどういう方だろうと思ったら、これはペンネームで、本人が2017.08の記事で公表している通り、本名は今井久美子で、経歴を見ると大変りっぱな経歴と研究実績のある細胞分子生物学分野の研究者のようです。
http://warbler.hatenablog.com/entry/2017/08/05/093420
水質を浄化するには、先ず川の上流域、中流域、下流域の水質を継続的に調査して、何が水質悪化の主要因なのかを特定し、その要因を除去するという科学的アプローチが必要な筈ですが、上記のNPO法人の活動目的は崇高ですが、最初からEM菌ありきで、EM菌の水質浄化効果を信じて培養液と団子を投入し続けるという間違った(非科学的)アプローチを採用してきたようです。
私たちは、どんどん川(川と言っても、河口部分以外は小さな水路)の水質を上流域から下流域まで複数の定点を決めて月に1回ぐらいの頻度で継続的に測定し、芝生育成圃場で使う農薬がEM菌の水質浄化効果に何らかの悪影響を及ぼすかどうか調査しようと思っていましたが、上記の記事の検証でEM菌投入にそのような効果がないことが明らかですので、水質調査は必要がないかもしれません。むしろ、芝生育成圃場で使う農薬がどれぐらい水路に流入するかしないか、農薬の水中濃度をモニタリングする方がより直接的な汚染指標として意味があるかもしれません。