2017年11月13日月曜日

東京の星陵会館で、農林水産省、農業・食料産業技術総合研究機構(農研機構)、農林害虫防除研究会の共催によるシンポジウム「薬剤抵抗性害虫の次世代管理体型構築に向けて」が開催され、私も聴講してきました。これは平成26年から30年までの5年計画で始まった農林水産省委託プロジェクト研究「ゲノム情報等を利用した薬剤抵抗性管理技術の開発」中間成果報告会でしたので、参加費は無料(情報交換会参加は有料)でした。第Ⅰ部と第Ⅱ部がありました。第Ⅰ部は殺虫剤抵抗性が問題になる何種類かの害虫(コナガ、チャノコカクモンハマキ、ワタアブラムシ、ネギアザミウマ、ナミハダニ、ヒメトビウンカ)を対象に抵抗性のメカニズムに関与している作用点変異や解毒酵素の遺伝子診断法の開発とそれを用いた実態調査、さらにシミュレーションによる薬剤抵抗性対策としての混合剤使用(複数薬剤の世代内使用)とローテーション使用(複数薬剤の世代間使用)の優劣の理論的解析が主でした。第Ⅱ部は、県とJAグループによる現場の取り組みの紹介でした。
大変素晴らしい内容でしたが、分子生物学の発展に呼応して抵抗性の検定を遺伝子レベルでできるようになったということとその後開発された新しい殺虫剤を対象にしているということを除いて、基本的には私が殺虫剤抵抗性問題に取り組んでいた1960年代、1970年代、1980年代と比べて問題はほとんど同じだなという印象を受けました。IPM(Integrated Pest Management 総合的有害生物管理)と似た状況で、1個体でも検定可能な遺伝子レベルの素晴らしい抵抗性検定技術が出来て、抵抗性発達を遅延させる対策ができても、それを実際に薬剤を散布する個々の生産者(農家)レベルにどうやって普及し実施していくかという仕組みが考えられていないということ。抵抗性発達を遅延させる理論的研究も1980年代からすでに存在しており、それをさらに精緻化した点は進歩ですが、抵抗性メカニズムに関与している個々の要因のフィットネス(環境適応度)の違いは対象とする昆虫種や個体群(生態種)によって振れがあって不明な段階で、シミュレーションだけではどれだけ実態を反映できるかが検証されていないということ。

内容的には殺虫剤抵抗性研究の進歩が理解できて素晴らしく、参加費無料も年金生活者にとってはありがたかったのですが、このプロジェクトの予算(年間?)が1億円で始まったという報告まではよかったのですが、無料で配布されたカラー刷りの講演要旨集には最上質の紙が使ってあり、いくら農林水産省の予算とは言え、ここまでする必要があるのかとちょっと疑問を感じました。役所の予算と言っても原資は国民の税金ですから、会計監査で適切な支出かどうかしっかり査定してほしい気がしました。国はそんなゆとりがあるのだったら、もっと大学の研究費を増額して少しでも基礎研究ができるように支援してほしいものです。
星陵会館というのはすぐ隣りの都立日比谷高校の同窓会が建てた建物と聞きましたが、りっぱな施設で、情報交換会(懇親会)も同会館4階のシーボニアという結婚式場のようなところでありました。

      (スライドはクリックすると拡大できます)





昼休みに現地の地理に明るい知人の下松(くだまつ)明雄博士の案内で日枝(ひえ)神社の境内を通ってうどん屋さんにランチを食べに行きました。日枝神社というのは、文明10年(1478年)創建とのことですが、昭和20年(1945年)の東京大空襲で焼失し、昭和33年(1958年)に再建されたとのことです。
http://www.hiejinja.net/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9E%9D%E7%A5%9E%E7%A4%BE_(%E5%8D%83%E4%BB%A3%E7%94%B0%E5%8C%BA)
ネットには、2008年6月13日に社内で巫女が神職に強姦されるという神社としては恥ずかしい事件があったことも記載されています。
先日虫供養が行われた浅草(あさくさ)の浅草(せんそう)寺もそうですが、修行をしたり静かに祈りを捧げる宗教的な場というよりも、東京の観光スポットの一つとしての面が大きくなっているのでしょう。
超高層ビルに囲まれた広大な敷地内には巨木の銀杏の木がそびえ立っていたり、悪臭がする銀杏(ぎんなん)が分散落下しないように受け網が設置されていたり、かなりの高低差のある石段の参道の横には珍しい野外エスカレーターが設置されていました。