2018年3月15日木曜日

松枯れを起すマツノザイセンチュウの感染経路として、マツノマダラカミキリ成虫が羽化脱出して樹冠部の当年枝・1年枝の樹皮を後食する時に体内に保持していたマツノザイセンチュウが虫体を離脱して樹体内に侵入することは広く知られていますが、それ以外にも根系癒合によって感染木から隣接木にマツノザイセンチュウが移動して感染・枯死させる経路もあることが田中一二三氏らによって報告されています。その場合は、殺虫剤散布で媒介昆虫のマツノマダラカミキリを防除しても、殺線虫剤の樹幹注入も注入薬剤の大半は水の蒸散に伴って上方移行することが知られていますので、根系移動するマツノザイセンチュウに対する防除効果は期待できないと考えられます。
石原バイオサイエンス株式会社の殺線虫剤ネマバスター(有効成分ホスチアゼート)は浸透移行性ですので、土壌施用することで根から吸収されるという特徴がありますので、根系癒合した隣接木にマツノザイセンチュウが移動・感染するのを防除できるかもしれないと考えてきました。石原バイオサイエンス株式会社に実証試験を提案したところ協力が得られることになり、試験圃場の候補地として今日成田市の甚兵衛の森に関係者(甚兵衛の森を守る会の協力者の樹木医3名と会社側からは本社と研究所から計5名)が集まって現地視察をしました。私も提案者として参加しました。
一応4月16日からの週に土壌施用して試験をしようという計画になりましたが、難しい問題があります。薬剤施用後にマツの枝先の殺線虫剤の濃度を経時的に分析しても、甚兵衛の森のように老大木や中大木や若木が比較的接近して分布しているところでは根系が重なり合って分布している可能性が考えられますので、隣接木から殺線虫剤が検出されたとしても、癒合した根系を通して薬剤が移動したのか、単に隣接木の根から吸収されただけなのかの区別がつかないということです。
下草に強風で落下したと思われる鳥の巣がありましたが、木の枝よりもビニールのヒモみたいな材料を多く使っていました。以前園芸学部構内で見つけた樹上のカラスの巣も、望遠レンズで写真を撮ってみたら物干し台から失敬した針金製のえもんかけが材料に使ってありました。