2018年3月22日木曜日

東京農業大学総合研究所研究会には現在28の部会がある筈ですが、今日はその中の1つである沙漠緑化研究部会の講演会が日本沙漠学会沙漠工学分科会との共催で開催されました。送られてきたプログラムを見ると、大変面白そうな講演でしたので、私も聴講してきました。
少し早目に着いたので、キャンパス周辺を少し散策しました。1号館の前の広場に小さな神社がありますが、農大は宗教には関係のない大学の筈なのに何故だろうとちょっと不思議な気がしました。
本年4月から開講予定の学科の紹介の看板には、応用生物科学部の中の学科として農芸化学という名前が書いてありますので、一度時流に合わせて変更になった「農芸化学」という名前が復活しています。
現在校舎やグランドを建設中の稲花(とうか)小学校の案内もあります。かなり大きなりっぱな校舎ができあがりつつありますが、入学定員72名というのはずい分少ないなという印象です。6学年合わせても、72×6=432名で、経営的に成り立つのでしょうか・・。
1号館の教室の一つを除いてみたら、黒板の横の壁に「大地震が発生したら」というポスターが掲示してあり、大地震から学生が自分を守るためにどういう行動をとったらいいか指示が書いてありました。私立大学はこういうことにまで学生に対して親切です。













太治(たじ)輝昭(てるあき)教授は、理化学研究所から12年前に東京農業大学に着任したそうですが、世界をリードする最先端の研究をしている農大の若手看板教授のようでした。太治教授の前に沙漠緑化研究部会の活動について紹介した地域環境科学部 生産環境工学科の田島 淳(きよし)教授によると、沙漠の緑化というと以前は太陽光パネルで発電した電気で水をポンピングする研究だとか、ぼかし(堆肥)を砂地に施用することで植物の生育が劇的に促進する研究などがほとんどだったか、太治教授を含めて、最近は全く新しいアプローチの研究が行われているとのことでした。
太治教授は先ず、2050年の世界人口95億人を養う食料生産のために、①耕地面積の拡大、②単位面積あたりの増収、③作物の改良という3つの方法があることを示した上で、耕地面積は開墾して広げても、一方で沙漠化で失われているので拡大は困難と述べ、耐乾燥・耐塩性植物の開発の重要性を研究の根拠にしました。
遺伝情報が確立していて、生育期間が短いシロイヌナズナの多数のaccession(系統?)を集めて、その中から耐塩性を示すものを選択し、耐塩性の遺伝子の特定とメカニズムの解明をしたところ、耐塩性と病害耐性とがトレードオフの関係にあることを見出したのだそうです。
遺伝子組換え技術で耐塩性植物を作出することは可能でも、日本では反遺伝子組換え作物(GMO)感情から、実用化に必要な圃場での栽培試験を実施するのは困難なようです。
 










高橋 究(きわむ)博士は、5-Amino Levunilic Acid(アミノレブリン酸、略称ALA)という物質には多様な働きがあることがわかり、化学合成すると金やプラチナより高価だが、親会社のコスモ石油が発酵法を確立して安価に入手できるようになったということと、SBIファーマ株式会社というのは医薬・ヘルスケア分野における開発を目的に設立されたということを紹介しました。
ALAは植物の光合成を促進したり、耐塩性を向上させたり、糖尿病やパーキンソン病やアルツハイマー病対策にも有効であったり、除草活性や殺虫活性も期待できるとのことでした。まるで夢のような話ですが、除草活性や殺虫活性のメカニズムはわかっていますかという私の質問に対しては、植物や昆虫にALAを取り込ませるとポリフェリンの蓄積し、光感受性が増大して活性酸素が生じること、とのことでした。
ALAを実際に農薬として開発を進めている企業があるかどうかについては知らないとのことでしたが、ALAは水溶性ですので、昆虫の表皮のワックス層を通過させるのは困難でしょうから、ベイト剤にして経口摂取させればどの程度の殺虫活性があるのかなと興味が湧きました。
さらに情報交換できるように、講演終了後名刺交換しました。