2018年5月18日金曜日

東京農業大学総合研究所研究会農薬部会(私が部会長)の平成30年度総会と特別講演が世田谷キャンパスの食と農の博物館でありました。幹事会はその前の時間帯に15号館2階の会議室で行われました。
経堂まで行くのに乗った電車の端のドアの上壁に、消毒剤票が掲示してありました。時々目にしますが、今年に入って月に1回ずつ4回消毒作業をしたようですが、消毒に使った薬品が「特殊殺虫剤」となっていました。電車内の食品残渣に発生するゴキブリや椅子に存在するかもしれないダニやトコジラミ(ナンキンムシ)や空間に存在するかもしれない蚊やハエ類などの衛生害虫防除を目的として防疫用殺虫剤を散布したのでしょうが、「特殊殺虫剤」では実際に何を散布したのか不明だなと思いました。防疫用殺虫剤の多くは農業用殺虫剤と共通の有効成分が使われてる筈ですが、具体的な殺虫剤名を掲示する必要がないとしても、それでは単に「殺虫剤」とせずに、「特殊殺虫剤」としたのは何故だろうとちょっと気になりました。


農大の垣根沿いにはいろいろな花が植栽されていて、さすが私立大学は管理が行き届いているなと感じました。比べて、千葉大学園芸学部は園芸が看板の学部でありながら、付属農場が柏に移転して以来、段々キャンパスの管理が行き届かなくなり、ちょっと恥ずかしい状態です。国立大学が予算的に追い詰められている現状(教員の年間研究費は僅か10万円)と教職員のゆとりのなさを示す一面かなと思いました。


幹事会が終わってから総会開始までに少し時間がありましたので、食と農の博物館でやっていた「オホーツク展」を見て回りました。東京農大は、明治維新の時に土方歳三などとともに函館の五稜郭に立てこもって最後まで新政府に抵抗した榎本武揚が創立者ということもあって、世田谷キャンプス、厚木キャンパスに加えて、オホーツクキャンパスを開設したようです。














特別講演をした春原(すのはら)久徳氏は一般社団法人セキュアドローン協議会 http://www.secure-drone.org/ の会長で、一般社団法人ドローン自動飛行開発協会 https://www.droneautomaticallyflightdevelopmentassociation.org/ の代表理事の立場にあり、ドローンに関わる基礎的な情報から入って、ドローンで何ができるか、農業におけるドローンの利用の現状など、実に素晴らしい講演内容でした。研究会農薬部会の法人会員は農薬メーカーがほとんどですが、今日の話題について興味を持っている学内の非会員の個人も何人か出席していました。
私を含めて聴衆の多くは「目から鱗(うろこ)」で、最近の科学技術の進歩に、こんなことまで可能になるのかと目を見張りました。ただちょっと残念に感じたのは、何年か前にヤマハが無人ヘリコプター(ラジコンヘリ)を開発した頃まではこの分野の日本の技術レベルは世界の最先端を走っていると思っていたのが、今はドローンに関しては中国のDJI社の技術が最先端で、日本でもDJI社から輸入した機体が圧倒的なシェアを占めているとのことでした。
ドローンによる農薬散布については、多くのメリットがある反面、ダウンウォッシュと呼ばれる下降気流が弱いために果樹や樹木のように立体的な植物には上から散布しても均一な薬液付着が難しいという弱点があり、水田や畑のような水平な圃場が主対象で、日本では果樹も樹木も農薬登録がないという現状です。
この点を克服するために、ドローンのノズルを下向きに垂直ではなく横向きに水平に取り付ければ、果樹や樹木のような立体的な植物に対しても横から散布できて付着量を確保できるのではないかというアイデアを春原氏に提案しておきましたので、ドローンメーカーと相談していただければと期待しています。何らかの方法で圧力をかけてノズルからの吹き出しができればなおベターです。