私は、ランチョンセミナーはダウ・アグロサイエンス日本株式会社のIsocrastTM(有効成分sulfoxaflor)という同社が開発した殺虫剤に関する説明の会場に行きました。この殺虫剤は、ネオニコチノイド剤と同様にnAChR(ニコチン性アセチルコリン受容体)に結合することから反農薬活動家グループがネオニコチノイド剤と一緒に禁止活動の対象にしている殺虫剤です。
説明では、nAChRに結合するといってもIARCの分類ではネオニコチノイド剤とは別のグループに分類されている、ネオニコチノイド剤を代謝するモノオキシゲナーゼによる代謝を受けない、ネオニコチノイド剤と交差抵抗性がない、ということからネオニコチノイド剤とは異なる独自の殺虫剤であるということを強調していました。
ネオニコチノイド剤の間でもミツバチに対する毒性その他の性質が異なりますので、ネオニコチノイド剤を一括りにしたり、nAChRと結合する殺虫剤を一括りにして禁止活動の対象にするというのは、全く科学的ではありません。
午後からのシンポジウム2「先端技術と農薬の未来像」では5題の講演があり、いずれも最先端の研究分野の紹介でしたが、すでに現役を引退して何年も経過した私にはまぶしいような羨ましいような気がしました。
学会終了後は、共同研究者の株式会社化学分析コンサルタントの阿部智早絵さんと一緒に夕食を食べましたが、まだ明るかったので、その前に千秋公園内を少し散歩しました。昔よく聞いた「赤い靴を履いてた女の子」の歌の女の子(金子ハツ)の銅像が立っていて、実は明治20年(1887年)に秋田県の女性刑務所で産まれた子供をアメリカ人の若い女性宣教師が養女にしたという説明が書いてありました。飛行機も新幹線もなかったそんな時代に、今よりももっと田舎だった筈の秋田県にアメリカから若い女性宣教師がキリスト教の布教に来たのですから、すごいなと思いました。しかもアメリカに連れて帰って大学にも行かせ、最後は人種差別のないハワイに一緒に移住したのですから、女の子にとってはどんなにかありがたいことだったろうと想像しました。単なる人道主義を超えて、キリスト教の愛の行為だったのでしょう。